February 20, 2026

作品づくりと陶芸教室への思い

「陶芸ってこれで終わりじゃないんです。ここから私たちの手がどんどん加わっていくので、作った方とお話をして、最後に思い描いているものを聞いてから釉薬を塗ったり削ったりします。私メインでやっちゃうと全然違くなるので、生徒さんが思うような感じを出すのが私の役割ですね」

自身にとっての作品づくりと、陶芸教室への思いについて話してくださる知美さん。

はじめはデザイナーを目指して美大に進んだ知美さん。しかし、粘土を用いて立体物を作っていくうちに、「陶芸」が自分のものづくりの感覚に合っていると感じたそうです。そして笠間焼で有名な茨城県笠間市に行き、陶芸家を育成する窯業指導所(ようぎょうしどうしょ)で修行を積んだのちに、作家として独立しました。

「窯業指導所を卒業した後は、仕事で電動ろくろを使って1日に100~200個の器を作っていたのですが、同じ形のものをひたすら作っていくことは自分がやりたいこととは少し違うかなと感じて、独立後は手びねりで器を作っています。でも、夫は同じ形の器がずらりと作れたときに心地良さがあるみたいで、そこは作家性の違いかもしれないですね」

私が中村さんご夫妻の作品を拝見した時、見た目や形が違えど、見るものを飽きさせないオリジナリティに富んだその造形。そして似たような形であっても、その一つ一つに込めた思いが違っているから、それぞれの作品から伸び伸びとした「楽しさ」、個性のようなものを強く感じました。

中村知美さんの作品
中村秀和さんの作品

知美さんのクリエイティブなインスピレーションの源は、日常の自然な出来事。例えば、自身が子育て中に陶芸を中断して育児に専念していた際、子どもと石を拾ったり、葉っぱを拾ったりといった何気ない遊びや体験したことが、制作にも影響しているんだそうです。「子どもの感性や琴線に触れるものって、そこら辺にある自然のものなんです。大人になってからほとんど意識していなかったものに心が向き、作品にもつながっていきました」

’’手が導いてくれる’’。作る前から具体的なイメージがあるというより、実際に手を動かしながらパッと思い浮かんだものをカタチにしていくのが知美さんのスタイル。

出来上がりをイメージしながら作ることもあるそうですが、それがうまく出るか出ないかは焼き物の特徴。たとえ思い通りにいかなかったとしても、かえって意図していなかった良さや発見を得れるのが、知美さんにとっての陶芸の魅力なのだとか。

しかし作家だからこその悩みもあり、「作品作りは思い通りにはいかない」と苦しんだことも。

窯を開けた時に想像からかなり外れているとショックだった、そんなときはご主人と一緒に『人生ってこの繰り返しだよね』と言いながら励ましあってきました。

それも、今ではそれを失敗だとは思わず、それも味でいいなと。思い通りにいかなかったことも全部含めて良いのだと思えるように。お互いに作家であるからこそ高めあえ、大変さを感じても二人で乗り越えてきたと話す知美さん。そんなお二人だからこそ、作品から生き生きとした「意志(こころ)」が感じられるのだろうと思いました。

そんな苦い経験があったこともあり知美さんが開く陶芸教室では、作品を作り上げるまでではなく、生徒さんには最後までこの場を楽しんでもらうことを大切にしているそうです。

地元の方や遠方から来て参加される方。中には、お母さんに連れられて3歳くらいのお子さんが作ることもあったり、80代のおばあさんと一緒に親子3代で参加される方、長年通われている方もおり、そんな方たちに楽しみながら気持ちよく陶芸をしてほしいという知美さんの思いがありました。「最後は楽しいで終わりたいんです。ここに来た甲斐があったなって思える教室にしたいから、こういう自由なスタイルなのよね」。

あまりお目にかかれない光景が美しい

「焼き物ってやっぱり技術も必要だし釉掛けや焼成だったり、私たちがやることがほとんどなわけです。人によっては作るよりも買った方がいいとかっていう人も中にはいるんだけど、そうじゃなくて。技術がなくても技術を学ぶわけでもなんでもない。休みの日に自分の時間を「いい時間だったわ」って、そう思えるような場所として、初心者の方でも気軽に来てほしいなって思っています」

新たな答えを求めていく作品づくり

知美さんに今後チャレンジして行きたいことや地域との関わりについてお聞きしました。

地元のお店や県外のお客様からも愛されている、中村さんご夫妻の作品。行った先のお店だったり、オーダーいただいた地元の方が実際に使ってくださっているのを見ると、作家として「気に入ってもらえたんだ」という嬉しさが。また、最近では自分たちよりも若い世代の方に陶器の良さを知ってもらえているという嬉しさもあったそうです。

割れにくい土を使うとどうしても味気ない仕上がりになってしまうので、商業的に流通している食器よりも欠けやすいなど繊細なところもあるそうですが、そういったところも「手仕事の器の持ち味」として、受け入れてくださることにすごく懐の深さを感じただけでなく、以前はあまり注目されなかったオブジェの作品が、最近になってぜひ使いたいと評価されることがあり、手応えも感じていました。

「手ごたえが時間差で来ている感じがしますね。だから、ものづくりにおいて『うまくできなかった、ダメだった』なんて自分で決めちゃいけないんだと思います。ある程度の成功を求めると作家としてはそこで止まってしまうので、新たな答えを求めていくように、オリジナリティのある突き詰めた作品づくりをしていきたいです」と、自分の作品づくりにどんどんチャレンジしていきたいという想いを話してくださいました。

完成したマグカップ

‍私にとっては数年ぶりの陶芸体験となった今企画。

また来たいなと思える場所

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エンドウ ジュン
ライター/カメラ:酒田在住。
庄内の美味しい食べ物をこよなく愛しています。
故にダイエット中ですが結果は出ていません。
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デザイナー/ライター:純度100%の鶴岡市民
「何事も見て・やってみる」がモットーです。
民芸品や立体造形に興味があります。
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ライター:酒田在住の一児の母、子育て奮闘中
大食いなのでいろんなお店へ通っています。
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庄司 あやの
デザイナー/ライター:生粋の酒田っ子。
食べることが大好きなため食事制限を諦め運動中。
自然と動物に毎日夢中。
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佐藤 太一
ライター/カメラ:3年前に仙台から移住。
住居の目の前がお墓で夜が少し怖い。
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