MOTCHED!ROOTS
鶴岡「パラディーゾコーヒーロースターズ」店主後藤さんが、このお店を作るまでと、こだわりについて
April 13, 2025
「今まで飲んでたコーヒーと、まったく別物だったんです」
そう語るのは、鶴岡のスペシャリティコーヒー専門店「パラディーゾコーヒーロースターズ」の店主 後藤さん。
東京にいた頃に立ち寄ったロースターで出会ったはじめてのスペシャルティが、それまで抱いていたコーヒーのイメージを大きく変えたという。
「味、香り、そして物語。それまで知っていたコーヒーとは、なにもかもが違っていました。あの一杯の感動がずっと忘れられなくて、気づけば自分でも焙煎を始めていたんです」
自分が感じた感動を、誰かに届けたい。
その思いから、仕事の傍ら焙煎の技術を学び、SCAJコーヒーマイスターの資格を取得。
週末にはイベントに出店しながら、自分なりの味を模索していった。
コーヒーマイスター:コーヒーに対するより深い知識と基本技術の習得をベースとして、お客様へ豊かなコーヒー生活が提案できるプロのコーヒーマン(サービスマン)のこと(引用:SCAJ)
やがて地元・鶴岡に戻り、間借り営業を経て、2022年に「パラディーゾコーヒーロースターズ」をオープンした。
店名は、奥田政行シェフの著書『庄内パラディーゾ』から。
庄内の食文化の奥深さに感銘を受け、「自分もこの土地の魅力を伝えるひとりになりたい」との思いを込めてこの名前をつけた。
「ここで美味しいコーヒーを出すことで、地域に少しでも貢献できたらと思っています」
スペシャルティコーヒーにとって、現地の生産者との信頼関係は欠かせない。
店内に並ぶ豆のパッケージには、生産地や農園名、生産者の顔が記されている。
「このグアテマラの豆は、エル・フエルト農園のグスタヴォ・ヴァスケスさんという生産者が育てたものなんです」
かつては地域単位でしか流通しなかった豆が、今では「誰が作ったか」まで辿れるようになってきた。
そう話す後藤さんの表情には「正当な対価と評価が、生産者に届くべきだ」という信念が感じられる。
スペシャルティコーヒーの価値は、単なる味の良さにとどまらない。
豆が育った土地や気候、作った人の姿や想い――
その背景まで含めて味わう一杯には、手のひらで感じるようなやさしい美味しさが宿っている。
後藤さんは毎年、生豆を扱う業者のカッピングイベントにも足を運んでいる。
生産の情報に直接触れながら、自らの目と舌で選び抜いた豆だけを仕入れているのだ。
その誠実な姿勢が、生産者との厚い信頼を築いているのだろう。
豆の販売もしており、庄内の風景を描いたイラストパッケージは、鶴岡在住のイラストレーター・コマツミワさんによるもの。
しかし...はたして自宅で、しかもたいした機材も技術もないのにこの立派なコーヒーを淹れても良いものか...なんて悩んでいたら
それを察した後藤さんが、「自宅でも美味しく淹れられるように焙煎していますよ」と笑った。
後藤さんが「人生を変えた一杯に出会って生まれたお店、パラディーゾコーヒーロースターズ」。
あのとき感じた驚きや感動があったからこそ、今ではこうして誰かの一杯につながっている。
そしてきっと、ここからまた誰かの何かが静かに動き出すのかもしれない。
パラディーゾの一杯は、コーヒーの向こうにある“景色”までも、そっと手渡してくれるようだ。
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